日本の長い夜の夜明け
1991年から社会に出て早32年。この間、低成長と言われている日本経済が再び成長し始めることはあるのか?筆者の身の回りで起きている最近のことを合わせながら、すこし明るい将来を考えてみたいと思います。
24年ぶりの円安
140円台のドル円レートを見るのは本当に久しぶりです。震災後の2011年に70円台のドル円レートから見たら2倍です。海外に3000円で売っていたものが6000円になります。国内で製造し輸出しているメーカーは、売り上げが爆上がりした状況でしょう。
でも、原材料の多くを海外調達しているところ、部品を海外で生産しているところは今一つな感じです。国内生産であっても、サプライチェーンの混乱で部品や材料の入手困難でうまく稼ぎ出せていないところもあります。
しかし、代替品への変更や流通状況の改善によって少しずつ利益が増大しつつあります。世界各国のインフレと日本のインフレの差をみるに、130~140円の円安はしばらく続くのではないでしょうか。
一部のメーカー企業では4月以降に昇給、ボーナスという形で社員に還元されるでしょう。もうしばらく今の金融緩和が続けば、この好循環が定着するのではないかと考えています。
為替介入の実施について
今後も日本のみが為替に介入しても、一時的な解消に終わると考えています。アメリカをはじめ、他国が望んでいなければ元に戻るのでしょう。つまり、介入しようがしまいが、140円台の円安はしばらく続くと思います。円安が続けば、生産拠点の国内回帰、そして設備投資も進むでしょう。
戦後の困難からの急成長
日本は1945年終戦後、1950年台の終盤まで混乱と困難の時期を過ごしています。そして、1960年から1990年までの間、急成長しました。しかし、その後30年間の長い夜を過ごしています。戦時中の価値観は、戦後の困難の中で崩壊し、新しい価値観に上書きされました。その結果、目覚ましく成長することが出来ました。
バブルを経て暗闇の30年に突入し、再び価値観が崩壊しました。もう、あの頃に戻れると思っている人はいないでしょう。新たな価値観が生まれ、デジタル化、IoT、AI、ロボットによる新技術によって日本が再び、成長する可能性はあると考えています。
1960年当初、日本がこれほど急成長するとは誰も思っていなかった。今、日本が再び急成長すると、誰も思っていなくても大丈夫です。
新しい要の技術とは
かつて、製鉄が要の技術でした。実は、いまも製鉄は要の技術の一つです。具体的には、超高効率モーターに使われる「高級電磁鋼板」は、日本が大きなシェアを持っています。
そしてモーターにおいても日本電産、ミツバ等、日本は強い支配力を持っています。超高効率モーターの代表であるサーボモーターでは、安川電機、三菱電機など、日本勢は存在感を示しています。
サーボモーターに使われる半導体においては、日本のシェアは小さいです。しかし、半導体を製造する装置となると日本の技術力が際立っています。
これら、新しい産業の要といえるモーターや半導体において、比較的良い位置につけている日本は、まだまだ成長できる素地を持っていると言えるでしょう。
成長に欠かせないデジタル化
日本の”強み”の一つに、金型があり、これを製造できる工作機械があります。しかし、両者とも中国や新興国に押され気味です。
「良い精度で加工を行うためのノウハウ」がデジタル化され、加工機械に組み込まれるようになったことが原因の一つです。日本では熟練工のノウハウを門外不出として秘密にする傾向があります。
一方、ノウハウを数値化し、汎用化する方法を構築し、装置に組み込んで販売する外国勢の姿は、価値の置き方、捉え方が全く異なる、新しいやり方といって良いでしょう。
デジタル化の本質はこれにとどまりません。
素材と加工指示書(図面)を入れれば自動で加工され、倉庫に運ばれ、保管と在庫管理が一連で行われるようになっています。物事、出来事をIoTを介して数値化(デジタル化)することで、AIで判断できるようになります。判断したあとは、ロボットが人の代わりを担います。
こういった「技術と技術をつなぐ技術」は、かつての日本が得意な分野でしたが、完全にお株を奪われた格好です。とはいえ、まだ始まったばかりですので、間に合うと思います。
あとがき
ここで書いた話は、筆者自身に起きた出来事であり、取引企業、協力会社で起こっている話です。このようなことが広く実現できるなら、進化が加速して世界は一変することでしょう。
人々が生活するための仕事の多くは、機械によって自動化されると思います。生きるだけなら働かなくても良くなるかもしれません。そうなったら、世界の価値観は新たに上書きされ、次の段階へ向かうのだと思います。