米国雇用統計の推移をグラフにしてみた
10/4に米国の雇用統計の発表がありました。雇用数の大幅な増加があり、予想をかなり上回ったことでサプライズとなりました。失業率も予想より低く、平均時給も予想を上回ったことから、今後の景気にポジティブな結果となりました。しかし、インフレ懸念が再燃する可能性を指摘する向きもあり、利下げは(後出しだが)失敗だったとの識者見解も報道されています。ただ、この結果を受けて短期的には株価上昇が見込まれ、景気後退懸念は一旦落ち着くでしょう。大統領選挙による先行き景気の不透明があるものの安心感がひろがりました。日本株への(上振れ)影響もあると思われます。
米雇用統計とは
原則、毎月最初の金曜日に公表され、アメリカの市場への影響力としては最大級の指標です。
その中でも関心の高い項目が以下の3点です。
- 非農業部門雇用者数
- 失業率
- 平均時給(前月比)
非農業部門雇用者数
「非農業部門雇用者数」は、製造業、建設業、サービス業といった流動的な雇用に就いている人の数です。自営業や農業従事者は含まれません。その後の景気の動向を表す指標として重要視されています。
景気低迷(株価下落)が続くときは雇用者数が少なくなり、景気回復(株価上昇)時は増えるといった、強い相関があります。
失業率
「失業率」は、働きたいけど失業している人の率です。過去4週の間に求職活動しなかった人は失業者と見なされません。
失業率は個人消費と強く関連し、仮に株価が低迷しても失業率が低ければ景気は持ちこたえます。逆に株価が上昇しても失業率が改善されなければ、景気が回復しない場合が多いです。仮に値が3%前半ならば、ほぼ完全雇用状態と言えます。
平均時給(前月比)
「平均時給」は平均時給の変化率です。
人を雇いたくても雇えない状態が続くと平均時給が上昇します。年2%のインフレに追従するなら毎月0.1~0.2%上昇することが必要です。年5%なら0.4%が必要です。
コロナ禍の時期は「補助金での貯蓄があるから働かない人」が増え、平均時給が爆上がりしました。
筆者は「平均時給が物価の上げ下げに連動しているかどうか」を見ています。
雇用統計から分かること
雇用統計の結果をどのように解釈するかは人それぞれだと思っています。そのなかで筆者がどのように考えて読み取っているかを記したいと思います。結論は「雇用数が減れば景気悪化、増えれば景気回復」です。
まず前提として、アメリカの景気は個人の消費行動で成り立っています。これは日本と同じですので、感覚的に想像できると思います。アメリカは国内総生産(GDP)のおよそ70%弱が個人消費で占めています。(日本は50%強)参照元:CEIC
個人消費の動向がアメリカの経済を支えているのです。経済が拡大すれば株価も上昇します。しかし株価は「今後、経済がどうなるのか」を先行して織り込む性質があるため、雇用統計のいわば雇用の結果を見ても明日の株価は分かりません。
なぜか?
雇用は雇用主が必要と感じたら増えます。全体的に雇用が増えれば時給も上がります。雇用主が必要と感じるのはいつかなのか?それは、消費が上向いたことを感じた時です。そして新しい人を雇いますが、実際に雇うまでには時間がかかります。
明日の株価を前もって知りたい人にとって、このタイムラグは致命的です。先行指標としてはあまり適さないと筆者は考えています。
では何を知るために使うのか?
雇用主の立場になって考えます。雇用主が解雇するときはどんな時か、それは事業が思い通りにいかず、自己防衛のため出金を抑えるときです。人は恐れを感じた時、迅速に行動を起こす特徴があります。そしてアメリカの場合、解雇はすぐに出来ます。
要は、景気が悪くなる時には比較的早いタイミングで雇用統計の数値が悪化します。「炭鉱のカナリア」的な用途が可能かと。とはいえ、解雇は個人消費が悪化してからの結果ですので数値が変化するタイミングは比較的遅めです。
筆者は下落方向の中期的な見通しを判断をする際に重要視しています。雇用統計の数値が2~3か月間悪化し続けた時は景気後退が継続していると捉え、短期(半月~1年)では戻らないだろうと思うことにしています。
※筆者が信頼できると判断した情報および資料等に基づいておりますが、その情報の正確性、完全性を保証するものではありません。また、作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。これらの情報によって生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いかねます。
直近の米雇用統計の結果
結果は、以下の通りです。
項目 | 前回値 | 予想値 | 結果 |
---|---|---|---|
非農業部門雇用者数 | 15.9万人 | 14.7万人 | 25.4万人 |
失業率 | 4.2% | 4.2% | 4.1% |
平均時給(前月比) | 0.5% | 0.3% | 0.4% |
「平均時給」は予想を上回り、
「失業率」は予想を下回りました。
「非農業部門雇用者数」は予想を大きく上回りました。
この結果は、景気の悪化が確実視され、利下げが継続される状況から一転して、景気好調の維持を連想するものとなりました。
しかし、他の指標は景気悪化の兆候を示しているため、今後も株価が上昇し続けるかは不透明。注意深く見ていく必要があると考えています。
とは言うものの、買い控えをすることなく淡々と米国株の積み立ては続けます。
為替は一旦円安となっていますが、政府の財政政策いかんによって円高に振れることもあるでしょう。筆者は「為替の円高」について、「円での数字が減り、ドルでの数字が上昇するだけの現象」と捉え、「為替については気にかけない」というスタンスを取っています。
今後の見通し
今年後半のアメリカは、
景気後退が起こるのではと危惧されていました。
- 金利はすでに十分高い。景気の足を引っ張るには十分である。
- インフレが沈静化したか確証が持てないので、金利を下げられない。
本来、株価が上昇を続ける理由が乏しいです。
FRBは、インフレ鎮静を確信すれば、景気後退を回避するため徐々に金利を下げ続けるでしょう。筆者は、景気は今後悪化し始めるという流れを念頭に行動していくつもりです。
・積極的な追加購入はせず、
・毎月の積立購入は維持し、
・売却はしない
というスタンスで行きます。
非農業部門雇用者数の推移
米非農業部門雇用者数は、農業を除く分野で前月の間に雇用された人数の増減を測定する指標である。労働省が発表する「雇用統計」の中核となる指標であり、失業率や平均時給とともに注視されている。非農業部門雇用者数は米連邦準備制度理事会(FRB)も注目している指標であり、金融政策の決定にも影響を与える。毎月第1金曜日に発表される。
Investing.comから引用
コロナ禍の時、値が上下にオーバーシュートしました。
2020年4月に2053.7万人減少し、次月以降の5月~8月は 250.9万人、480万人、176.3万人、137.1万人増加しました。
失業率の推移
失業率は、労働力人口に占める失業者の割合をさす。一般的に失業率の上昇は経済状況の悪化を示すことから、米国の雇用動向を知る上で重要である。労働省から毎月発表されるが、非農業部門雇用者数、平均時給とともに米国の雇用分野の指標として注目度が極めて高い。これら雇用統計の結果は米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に影響を与えるため、世界中から注目される指標となっている。
Investing.comから引用
直近の3%台は歴史上、もっとも低い値でした。
平均時給の推移
米国労働省が毎月発表する指標であり、同時に発表される非農業部門雇用者数とともに極めて注目度が高い。平均時給は農業部門以外の主要産業の1時間当たりの平均賃金の増減を公表したものであり、人件費の増加を把握できる。平均時給が伸びれば個人消費につながるため、景気やインフレの状況を確認することができる。
Investing.comから引用
インフレ年2%に見合った給与の上昇率は、毎月0.17%になります。
コロナ禍により2020年4月の値が大幅に上昇し4.7%となりました。反動で翌月、翌々月は大幅に下落しています。
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