為替リスクは幻か

筆者は外国株に投資を行うときに為替ヘッジを行う必要は無いと考えています。理由は通貨(円)も株や投資信託と同じく価値が上下動するからです。この考えに至った経緯をつらつら書いてみたいと思います。
投資をしていない人はやばい?!
やばいかどうかは個人の考え方次第ではありますが…、ひとつの資産しか持っていないということは、その資産の価値が崩れたとき、大損をするという意味でやばいと表現しました。投資をしていない人は、資産のほとんどを日本円で持っているということになります。日本円は絶対的な価値を持っているわけではなく、米ドルやユーロといったメジャーな通貨との相対的な価値が定められています。この価値は日々の取引量に応じて上下します。いわゆる、「今日の1ドルは109円です」とテレビ等で紹介されているアレです。

長期的には、米ドルの価値は日本円に対して徐々に低下してきています。言い換えれば、日本円の価値が徐々に高まった歴史です。一方、2000年からの直近20年では、10,000円は74ドルから131ドルの間で上げ下げを繰り返しています。102.5ドルを基準にすると±27.8%です。
この間、アメリカ人から見ると日本円が±27.8%の変動をしているように見えています。株式並みの大きな変動幅です。
日本円という銘柄の変動幅
先にアメリカ人から見た変動幅を示しましたが、EU圏の人から見た変動幅、英国人から見た変動幅、オーストラリア人から見た変動幅、そして、中国人から見た変動幅を調べました。
EU圏ユーロ 中央値 77ユーロ 変動幅 ±35%

英国ポンド 中央値 59ポンド 変動幅 ±42%

豪ドル 中央値 122ドル 変動幅 ±45%

中国元 中央値 646元 変動幅 ±30%

各国から見た日本円は驚くほど変動しています。日本の物価は高いとか言われますが、こうしてみるとその時折で評価も随分変わっているものと想像出来ます。
日本に住んで日本だけを見ていることは、あたかも電車に乗って車内だけを見ている状態に近いと思っています。車窓を見なければ車内はおおむね平穏ですが、電車自体は移動しています。北に進めば寒くなりますし、南に行けば暑くなります。でも車内はエアコンが利いているので外の気温が変化しても気がつきにくいです。
ここでいうエアコンとは、日本の企業、商店の努力による物価安定です。為替ほどは大きく変動していない状態を表しています。
今の安定はいつまで続くのか
この20年間、米ドルに対して±27.4%の変動がありましたが、企業、商店の努力によって、おおむね平穏だったと思います。ですが、今後は少しづつ円の価値が下がっていくような気がしています。近年、魅力ある、価値の高い商品を世界に対し生み出せていない状態は徐々に日本の通貨「円」価値を棄損していきます。
通貨のリスクとは、その価値が相対的に下がっていくことにあります。
現在、輸出における自動車関連品の割合は20%を超えます。もしEV(電動自動車)化によって日本車の競争力が失われた場合、その影響力は計り知れない程のものになるでしょう。
鉄鋼が4%を占めます。こちらも脱炭素宣言によって弱体化の懸念があります。日本での生産量は減り続けることでしょう。
半導体関連は、8%強です。国際競争がますます激しくなり、アメリカや中国は、国の開発援助金を大幅に引き上げています。日本の民間企業の力だけでは太刀打ちできなくなる可能性があります。
財務省貿易統計 最近の輸出入動向 主要輸出入品の推移(世界)から引用
これまでに上げた懸念は「リスク」であり、こうなるかもしれないという予行演習の題材です。これらのリスクがありながら、日本円一本足打法(日本円しか持たないこと)を続けることは論理的ではありません。
為替ヘッジは日本に閉じこもることを意味する
外国に投資することとは、外国の成長力に期待するとともに、「日本円のみ持つことのリスク」を軽減する効果をもたらします。もし、為替ヘッジを行うと、外国の成長力による利益は享受できるかもしれませんが、日本円のリスクはそのままになってしまいます。せっかくの一石二鳥が半減してしまいます。
日本が成長するシナリオもありますが、日本が縮小するシナリオも考慮するために、外国に投資した後の為替ヘッジは不要であると考えています。為替ヘッジという言葉には、日本に閉じこもっている感がにじみ出ています。

通貨を分散して所持している状態はリスクの軽減が出来ている状態なのに、外国の通貨を持つと為替リスクがあるというのは矛盾しています。外国の通貨を持つときの為替リスクは幻想だと筆者は思うのです。
そうはいっても評価損は気になります
この問題の解決法は、投資結果のグラフを日本円だけではなく、米ドルに置き換えたもの、ユーロに置き換えたものの3つを同時に見ながら進捗把握をすればよいと思います。
株価が変わっていなくとも、為替が変化すれば、グラフは上下します。ですが、3つのグラフのうち少なくとも1つは上がり、1つは下がっていると思います。
価値をどこに置くか…、それこそ3つの通貨で分散して把握するように努めればよいと筆者は思います。

S&P500指数と、S&P500指数を円レートに変換、円レートに変換した値をさらにユーロレートに変換したグラフです。2002年1月を基準に米ドル建てで所持しているものとして算出しました。外国株や投資信託をそれぞれの国の為替に照らし合わせると各々異なったグラフになります。
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節約術や市場急落時にメンタルの支えになる情報を発信しています。|50代メーカー勤務、研究開発に従事中。|2004年に投資開始、個別株,信用取引⇒FX⇒リーマン遭遇⇒米国株ETF⇒現在S&P500投資信託eMAXIS Slimをほったらかしで運用中。
千葉県在住。
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