株と債券のリバランスは効果があるのか

2021/11/06

株と債券のリバランスは効果があるのか

株と債券を半分づつ購入した場合、リバランスするといいよと言われています。

いまいちピンと来なかったので、ほったらかしにした場合と、リバランスした場合の結果を過去のデーターを使って比較してみました。

調べた結果は、株価が上昇し続けるときにおいては、リバランスしない方が良い成績になります。

一方、株価が時々下落する場合は、リバランスした方が良い成績なる傾向がありました。

リバランスする、しないにかかわらず株価急落時は、ほぼ同等の損失になります。この点は予想に反した結果でした。

リバランスとは

仮に、株と債券を1:1の比率、要は半分づつ購入したとします。

時間が経過し、価格(指標)が変動して株と債券の評価額の比が、株2:債券1となったとします。

これを、当初の1:1の比率に戻すべく、債券を買い増し、もしくは株を売却して債券を買い増しすることをリバランスといいます。

リバランスするときの注意点

実際にリバランスするときは、売買を行うので手数料や税金がかかる場合があります。

単に買い増してあれば、税金はかかりませんが、購入手数料がかかる場合があります。また、元手も必要です。

一方、株を売却して、得たお金で債券を買った場合は、株の売却益に税金がかかります。

税金は、利益額に対して20.315%となり、かなりの痛手です。頻繁にリバランスするのは儲けが減りますので、その見極めも重要になるでしょう。

米国株と米国債券の過去データを使って検証

分散投資はリスク回避の基本ということで、株50%、債券50%を購入する方針で話を進めます。

株の過去データーとして、S&P500インデックスのETFである「SPY」を。債券の過去データーとしてブルームバーグ債券インデックスのETFである「AGG」を使います。

「SPY」:SPDR S&P 500 ETF

資産クラス株式設定国米国通貨米ドル
投資地域アメリカ設定日1993/01/22リンクファクトシート
銘柄詳細

「AGG」:iシェアーズ コア米国総合債券ETF

資産クラス債券設定国米国通貨米ドル
投資地域アメリカ設定日2003/09/22リンクファクトシート
銘柄詳細

VOOやBNDを使わず、SPYとAGGを使用した理由は、単に設定日が古く、長い期間の検証に向いていたからです。

検証期間は、2004年1月に100ドル分の株ETFと100ドル分の債券ETF、つまり1:1の比で購入し、

A.そのまま2021年10月までほったらかしにした場合、
B.毎年1月初めに1:1になるようリバランスした場合、
C.毎月の初めに 1:1になるようリバランスした場合、
を、計算し、比較しました。

比較は、①どれだけ儲かったか、②③一時的にどれだけ下落したか(前月比、直近高値比)で判定します。

①期間末の上昇率(%)
②期間中における前月比下落率(%)の最大値
③期間中における直近高値からの下落率(%)の最大値

リバランスなしが好成績、リスクは僅差だが…

今(2021年11月6日時点)は、株が一方的に上がっているため、「ほったらかし」が一番成績が良いです。

リスクについては、リーマンショック(2008~2009年)時の下落における値です。リバランスをした方が下落幅が小さいのではないかと予想していましたが、今回検証した期間と銘柄では、さほど違いが出ませんでした。

上昇率を縦軸、期間を横軸にしたグラフです。

2016年からの株の上昇が一方的なため、「ほったらかし」の方が上昇率が高い結果となっていますが、2008年後半から2017年まではリバランスをした方が良い結果でした。

リバランスの頻度ですが、年に1回と毎月では、年に1回の方が上昇率も高く、途中の成績もよい結果となりました。

リバランスの回数を増やしても良い結果にならず、ほったらかしても良くないとなると、適度な頻度というのが気になります。

リバランスがうまくいく条件とは

リバランスのやり方に「株と債券の資産額の差が〇〇%以上になったら行う」、つまりバランスが崩れた時だけ行うというものがあります。

シミュレートしてみました。株と債券の評価額の差が10%になった時、20%になった時にリバランスを行った場合を以下に示します。

「評価額の差が10%になった時、リバランスを行う」は、毎年行うと似通った結果となりました。

そして、「評価額の差が20%になった時、リバランスを行う」が、より良い結果となりました。

”毎年”の場合は、17回リバランスを行ったことになります。”10%”の場合は、13回リバランスを行いました。

”20%”のときは、5回でした。

見えてきた傾向

リバランスは、定期的に行うよりも一定の評価額の差が発生した時に行う方が安定した結果になりそうです。

その方がリバランスを実行する回数が減り、税金や手数料の支払いが減るからです。

そして、行っていることといえば、「株が高くなってバランスが崩れたら、株が下がってもいいように買い替える」、「株が下がってバランスが崩れたら、このあと株が上がった時に儲かるよう、買い替える」ということかと思いました。

ゆえに、一方的に株が上がり続ける場合には対応が難しい(できない)と考えるのが良いと思いました。

本来、株は上がったり、下がったりするものとするなら、リバランスは効率的に機能するでしょう。

まとめ

  • 株が上がり続けるならば、リバランスすると利益が低下する。しかし株はいつかは下落します。
  • 株が下落したら、リバランスをすることによってその後、利益を上げることが出来ます。
  • リバランスは、株価下落時に受ける損害を和らげる効果はあまりない。
  • 評価額の差が発生した時のみ、リバランスを実行する方が、定期的に実行するよりも売買頻度が減って手数料的に有利。